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Special

海外で活躍する

Project Story

海外の大型買収を成功に導いた
当事者たちが語る
「海外ビジネスの醍醐味」

SBI新生銀行は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19、以下、「コロナ」という)が
世界的に大流行し東京オリンピックの開催が1年先送りになった2020年9月、
ニュージーランドで80年以上の長い歴史を持ち、貸付残高において
圧倒的No.1を誇る大手ノンバンクUDC Finance(以下、「UDC」)の買収案件を成功に導いた。
このUDCの買収案件に携わった当事者たちに、当時の状況や思い出深いエピソード、
そして海外ビジネスに携わる醍醐味について語ってもらった。

PROJECT MEMBER

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大久保 宏章

エグゼグティブ
ディレクター
グループ海外事業
統括部兼
グループ法人
企画部担当
1995年入社

日本長期信用銀行に新卒として入社後、京都支店で金融債の窓口販売業務、東京営業第一部で中堅企業向け融資営業に従事後、企業再生業務、プリンシパル投資業務のほか、UDCの買収案件を含めたSBI新生銀行グループの事業戦略にかかわる業務などを担当。現在は、東南アジアのパートナー企業のJVプロジェクトや国内法人との資本業務提携プロジェクトなどを推進。

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阪本 雅明

グループ海外事業
統括部
統轄次長
1990年入社

日本長期信用銀行に新卒として入社後、東京営業第二部にて中堅企業向け融資営業などに従事後、香港支店にて日系企業担当を経て、プリンシパル投資業務において国内およびドイツ、台湾、韓国など、海外の多くの投資案件に携わる。また国内のサービサー、台湾上場金融持株会社、韓国投資会社などの要職を歴任後、現在は、グループ海外事業統括部にて企画チームを率いる。

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Ravi Barnes
(ラヴィ バーンズ)

グループ海外事業
統括部
業務推進役
2014年入社

インド国内のIT企業で勤務し、世界各国の金融機関とさまざまなプロジェクトを経験後、2014年にSBI新生銀行に入社。UDCの買収時にはディレクターの役割を担い、2022 年 1 月 からは同社の取締役会の一員を務めている。現在はグループ海外事業統括部の企画チームにおいて今後の投資・買収先の検討などを行っている。

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角 敬洋

グループ海外事業
統括部
業務推進役
2004年入社

前職でCRMシステム開発コンサルタントを経験後、2004年に新生フィナンシャルに入社。新規申込受付センターの戦略企画およびITシステム企画部のディレクターを担当。2017年にはベトナムのMcreditに出向し、現地の副CIO(Deputy Chief Information Officer)を務める。2020年からは統制チームの一員としてUDC のガバナンスを担当。

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阪本 雅明

SBI新生銀行グループの事業戦略にかかわる業務を担い、UDC買収においては、案件の発掘、買収交渉、クロージング、PMI(経営統合業務)までを主導。

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大久保 宏章

SBI新生銀行グループの事業戦略にかかわる業務を担い、UDC買収においても案件初期より参画。

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Ravi Barnes
(ラヴィ バーンズ)

買収検討時から参画し、クロージングまでの現地マネジャーらとの折衝、買収後の(ITプロジェクト含む)会社運営に係る管理、監督を主導。

UDC買収後にプロジェクトへ参加
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角 敬洋

UDC買収後に統制チームの一員として、ガバナンスの構築を担当。

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ノンバンク事業への出資を
模索する中、UDCの買収を検討。

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UDCの買収は、現在のグループ海外事業統括部の前身であるグループ事業戦略部で、グループのインオーガニック戦略、新たな海外事業を推進するため、地理的なエリアや収益性の観点などから有力な買収候補先としてリストアップしていたのが発端でした。国内では我々が期待する買収条件を満たす対象投資先を発掘しづらいうえ、今後、本格的に少子高齢化社会を迎える日本で成長戦略を描くことにも限界がある。そこで、成長性が高く、今後ますますの発展が見込まれる東南アジアやオセアニアなどに目を向けて投資先を探っていました。

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SBI新生銀行グループの中核を担う昭和リースやアプラスが展開しているビジネスとの親和性が高いノンバンク事業への出資機会を模索する過程で、検討の俎上に載ってきたのがUDCでした。同社は、昭和リースが得意とする法人向けのアセットファイナンス、アプラスの事業分野であるオートローンでニュージーランドトップを誇るノンバンクで、オーストラリア・ニュージーランド銀行(以下、「ANZ」)の子会社として金融規制に対する先進的な組織対応が導入されていること、経営陣が極めて有能であり、信頼できるボードメンバーであったことから、買収先として本格的に検討を進めることになりました。

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アジアは成長性が見込める分、買収価格が高いうえに、ガバナンスの観点からみるとまだ発展途上であるケースが多く、日本の金融機関が求める水準まで組織体制を構築するには時間と労力を要するため、投資対象としてはリスクリターンが合いづらい案件が多いという特徴がありました。また、日本のメガバンクなど資本力がある先も積極的にアジア進出を模索する事業戦略のもとで積極的に投資先を探していたこともあり、SBI新生銀行の間尺に合う先を見つけることは大変難しい状況でした。そこで注目したのがオセアニア地域でした。日本と比較して、GDPの今後の伸び率も相応に期待できることに加えて、政治や社会経済も安定しているため、カントリーリスクの観点からも検討しやすいといえ、その中でUDCは私たちが考える投資条件を満たし、投資対象にフィットしました。

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ANZとしてもグループの資本効率の改善に注力する中で、事業再編の一環としてUDCの売却検討を進めていたため、タイミングはよかったといえます。一方で、ニュージーランドトップのノンバンクであり、毎年安定し利益を稼ぎ出している企業ですから、人気が高く、SBI新生銀行のほかにもグローバルファンドなど数社が買収検討を進めていました。売り手となるANZの経営陣も当初は「SBI新生銀行が本当にスポンサーになれるのか」と、正直なところ懐疑的だったと思いますが、コロナ禍で移動制約のある中、SBI新生銀行の経営陣がニュージーランドまで赴いてUDCにSBI新生銀行グループの事業戦略を丁寧に説明し、ともにさらなる成長を希求している熱意を伝えました。それに加え、コロナが流行したことに伴って、世界的な経済環境の低迷による顧客の支払余力が低下し、UDCでも返済猶予債権が一時的に増加したことで、証券化による資産調達などにマイナスの影響が出始めていました。結果的にその状況が、銀行がグループの中核を担い、安定的な資金サポートができる私たちには追い風となり、ANZ、UDCの経営陣の賛同を得ることにつながりました。

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コロナ禍で繰り広げられた交渉劇。
買収後は順調に業績を伸ばす。

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コロナで世界経済が大きな打撃を受ける中、ニュージーランド政府が金融機関に支払猶予の指示を出すなど、現地での金融事業の先行きが不透明になる状況となりました。一方、当時UDC株を100%保有していた豪州4大銀行のひとつであるANZは、規制対応もあり、短期間で確実に買収を完了させるという意向を持っており、結果、我々にとって好条件で買収を成立させることができました。

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案件検討開始当初はコロナ禍前ということもあり、TeamsやZoomなどのオンラインの会議ツールはまだまだ普及しておらず、交渉のほとんどは発言者の顔が見えない多国間の電話会議やメールで進んでいきました。いわゆる「テレカン(telephone conference)」です。
案件検討を進めるにつれて、コロナ禍に突入し、案件検討終盤からは、TeamsやZoomなどのオンラインの会議が普通になっており、時差を除けば、コミュニケーションに関してはそれ程の不便は感じなくなっていました。

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UDCの経営陣との条件交渉を含めたコミュニケーションは当然ながらすべて英語で、海外でのビジネス経験が豊富かつネイティブスピーカーのラヴィさんの力も借り、まさに私たちはチームを組んで、この買収案件に取り組みました。チームメンバー一人ひとりのプロ意識は高く、各々の専門分野を活かしてこの案件にコミットしてくれていたので、大変心強かったですね。

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私は買収が完了した後からチームに合流し、買収後のガバナンスの構築を担当しました。UDCはANZの子会社として管理の枠組みはしっかりしていたものの、日本の枠組みで求められる報告体制を構築することが必要でした。買収後、「SBI新生銀行グループで求められる管理の枠組みでUDCを適切に管理できるのか」と議論をしていたことは懐かしい思い出です。でもUDCの経営陣、社員は皆とても優秀な方ばかりで、毎日のようにTeamsでコミュニケーションを取るうちに、カルチャーギャップや考えの相違点は薄れていき、互いの信頼関係が増していく感覚が芽生えていきました。個人的に非常に面白い体験でした。もともと、UDCは社歴も長く自律的にガバナンスの仕組みが確立していたことが大きかったかもしれませんね。

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UDCは長い歴史を持っている最大手のノンバンクとして確固たる地位を築いており、ニュージーランドにおいて、UDCといえば「ノンバンクのリーディング・カンパニーですよね。」と誰からも認知されている存在ですから、そんな会社の皆さんと一緒に仕事ができることは非常に誇らしくもあり、日々、エキサイティングで楽しい毎日でした。

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鍛錬されたマネージメントチームを中心に、役職員のビジネススキルが非常に高い。アウトプット資料を見ているだけでもそれがよくわかりますし、伝わってきました。ビジネスパーソンとして、尊敬できる相手と仕事ができる喜びを感じると同時に、身が引き締まる思いがしました。

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銀行であれば与信管理上の問題や、リーガル的な問題から検討に時間を要する案件であったとしても、UDCのビジネスモデルはノンバンクの特徴を最大限活かし、相手のビジネスの特性を的確に、かつ素早く理解、与信判断することでスピーディに貸付を実行できる。こうした強みがあるからこそ、ニュージーランド国内で確固たる地位を築いていました。買収から数年経過した現在、UDCは変わらず毎年のように高い業績を上げ成長し続けています。SBI新生銀行グループへの利益貢献も投資時の予想通り、順調に推移しています。

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UDCでは優良顧客が主な貸付対象となっています。リスクポリシーが明確に定められていて、どういう顧客ターゲットに貸し出しするのかを事前に決めてきちんと管理している。強固なビジネスモデルを構築し、徹底的に練り上げられた事業戦略に基づくビジネスの土台があるからこそ、コロナ禍の厳しい状況下でも利益や貸付残高を伸ばせていたのだと思います。

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ニュージーランドならではの働き方
など、日本側が見習うべき点も多い。

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ニュージーランドでは、ダイバーシティを重視する国民性もあり、異なった考えや、外国人を積極的に受け入れる移民政策や女性活躍が進んでいます。UDCが社員に提供している働き方には、現在の日本企業、そして私たちが見習うべき点もたくさんあると感じます。

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確かにダイバーシティに対する考え方はとても先進的で、UDCでもいろいろなバックグラウンドを持った社員が活躍しています。SBI新生銀行グループは日本企業の中では相当ダイバーシティが進んでいるという自負があったのですが、より進んでいると感じる点が多々ありました。ワークライフバランスの考え方も、日本に比べて相当進んでいると感じます。

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学校が休みのときには仕事を休むのが当たり前ですし、残業もほとんどしません。金曜日になるとお昼頃には仕事を切り上げて帰ります。それでもやるべき仕事はきちんとやる。時間通りに業務を終え、家族との時間もきちんと確保しています。

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ニュージーランドは日本と比較すると、市場規模という観点ではそれほど大きくないため、強力な競合相手、新規参入者が入ってくる余地が小さいです。まずはニュージーランド国内で引き続き確固たる事業基盤を維持し、ブランド力、ステータスを磨き上げていく。今後もこの基本戦略はしっかりと継続していくべきだと考えています。ニュージーランドに子会社があるというのは、今後も海外戦略を加速し拡大していこうとしているSBI新生銀行グループにとって、イメージ戦略も含めて、その意義は大きいと考えています。

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買収後の大きな成果としては、残価設定ローンの新商品を導入したほか、30年ぶりとなるUDCによる現地での買収案件やABS(資産担保証券)の発行を実現しました。SBIグループとのシナジーとして、案件紹介によりコベルコ建機との取引も開始しました。

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今後は、積極的に社員同士の人的交流を図っていきたいと考えています。UDCでの働き方には学ぶべきことがとても多く、SBI新生銀行グループとして別の国でノンバングの企業を買収したり、新たな事業を展開したりする際に、UDCで得た知見を活かしていきたいですね。

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海外事業には、未来の技術に
いち早く触れる面白さがある。

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SBI新生銀行グループが属するSBIグループには、「新産業クリエーター」として21世紀の中核的産業の創造および育成を担うリーディング・カンパニーになるという経営理念のもと、多くの海外拠点を有しており、ベンチャーファンドと組みながら幅広くビジネスを展開する土台があります。私たちは、SBIグループに加わったことでさまざまな可能性が広がったと感じており、そこには大きな期待をしています。

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そのような環境の中で海外事業については、今後はSBI新生銀行グループという視点だけではなく、SBIグループとしてどう取り組んでいくのかという視点で考える必要性を痛感しています。現地のパートナーと投資ファンドを作り、最新のテクノロジーに投資を行ったり、最近ではアフリカや中東などにも目を向けたりしている。金融事業という得意技を活かしながら、総合商社と同じような広がりを持ってビジネスに取り組めるのが面白い点だと思います。今まで以上に、いろいろな投資案件や買収案件に関与できる可能性を感じています。

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私もまさにお二人が話したことが、グループ海外事業統括部で働く醍醐味だと感じます。最近ではこうした魅力を伝えるため、海外事業に興味を持つ若手社員の皆さんを招待し、SBI新生銀行の社内で海外の仕事を紹介するレクリエーション、社内勉強会なども開催しています。

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SBIグループでは、最先端のテクノロジーにかなりの投資をしています。その中から、市場を動かす大きなドライバーになるような技術が生まれてくるかもしれません。UDCのようにすでに安定した事業基盤を所有する企業を買収するケースもあれば、最先端の技術を持った会社の将来性に期待し、投資し、それが大きく成長していくよう支援していく。そんな案件もあります。世の中を変える「ゲームチェンジャー」となりうる会社にいち早く触れられる可能性があることも、海外事業統括部で働く一番の醍醐味だと思います。